高齢の親が一人暮らしをしていると、「知らない電話に出てしまわないか」「警察や役所を名乗る相手を信じてしまわないか」「ATMへ誘導されないか」と心配になることがあります。
特殊詐欺は、電話だけでなく、SMS、SNS、ビデオ通話、偽サイトなどを使う手口へ広がっています。特に近年は、警察官を名乗って「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」などと不安をあおり、現金やインターネットバンキングで送金させる「ニセ警察詐欺」が大きな問題になっています。
警察庁によると、2025年(令和7年)の特殊詐欺は認知件数27,832件、被害額約1,423.1億円で、前年より認知件数・被害額とも大幅に増加しました。さらに2026年(令和8年)5月末の暫定値では、認知件数18,067件、被害額1,514.7億円となっており、被害は非常に深刻な状況です。
この記事では、2026年8月時点の警察庁などの公的情報をもとに、高齢者やその家族が知っておきたい特殊詐欺の代表的な手口と、今日からできる対策を分かりやすく解説します。
緊急時・相談先
- 被害が発生している、犯人が近くにいる:110番
- 詐欺かもしれないと感じたとき:警察相談専用電話 #9110
- 契約・悪質商法の相談:消費者ホットライン 188
この記事で分かること
- 2026年現在、特に注意したい特殊詐欺の手口
- ニセ警察詐欺・オレオレ詐欺・還付金詐欺などの特徴
- 電話・SMS・SNSで詐欺を見分けるポイント
- 一人暮らしの高齢者が今日からできる対策
- 親が被害に遭ったとき家族が取るべき行動
特殊詐欺とは?2026年から分類が変わった
特殊詐欺とは、犯人が対面せずに電話やインターネットなどを使い、親族・警察官・行政機関・金融機関・事業者などを装って、現金やキャッシュカード、電子マネーなどをだまし取る犯罪の総称です。
警察庁は2026年から特殊詐欺の分類を見直し、被害が急増している「ニセ警察詐欺」を独立した手口として位置付けました。また、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として整理しています。
そのため、2025年以前の記事や統計と2026年以降の統計では、分類方法が異なる場合があります。本記事では、2026年の警察庁の整理に沿って解説します。
高齢者や家族が注意したい特殊詐欺7つの手口
1.ニセ警察詐欺
犯人が警察官や検察官などを名乗り、「あなたの口座が犯罪に使われています」「あなたに逮捕状が出ています」「資金を調査する必要があります」などと言って不安をあおり、現金や口座への送金を求めます。
電話だけでなく、SNSやビデオ通話へ誘導して、偽物の警察手帳や逮捕状のような画像を見せるケースもあります。
重要
警察官が電話やSNSで「資金調査のために送金してください」と指示することはありません。不審な電話を受けたら一度切り、110番または#9110へ確認してください。
2.オレオレ詐欺
息子、孫、甥などの親族を装い、「会社のお金をなくした」「事故を起こした」「今日中にお金が必要」と言って現金を要求する手口です。
「携帯電話の番号が変わった」と言われても、以前から知っている本人の電話番号へかけ直して確認してください。
3.還付金詐欺
市役所、区役所、税務署、年金事務所などを名乗り、「医療費や保険料の還付金があります」と電話してATMへ誘導する手口です。
ATMを操作して還付金を受け取ることはできません。「還付金+ATM」という言葉が出たら、詐欺を疑って電話を切りましょう。
4.架空料金請求詐欺
「有料サイトの料金が未払い」「携帯電話料金が未納」「このままでは裁判になる」などとSMSや電話で連絡し、存在しない料金を支払わせる手口です。
- コンビニで電子マネーカードを購入する
- カード番号を電話やメッセージで伝える
- 指定口座へ振り込む
- 暗号資産を送金する
SMSに記載されたURLや電話番号をそのまま利用せず、契約しているサービスの公式アプリや公式サイトから確認してください。
5.預貯金詐欺・キャッシュカードを狙う手口
警察官、銀行員、市役所職員などを装い、「あなたの口座が不正利用されている」「カードを交換する必要がある」と説明して、キャッシュカードをだまし取る手口があります。
金融機関や警察が、電話で暗証番号を聞き出したり、自宅を訪問してキャッシュカードを預かったりするという話には十分注意してください。
6.SNS型投資詐欺
SNS広告、著名人を装った投稿、投資グループへの招待などをきっかけに、投資を勧めてお金をだまし取る手口です。
「必ずもうかる」「元本保証」「あなただけに教える」といった勧誘には注意してください。送金前に、金融庁の登録事業者かどうかを確認することも重要です。
7.SNS型ロマンス詐欺
SNSやマッチングサービスなどで知り合った相手が、恋愛感情や親近感を抱かせた後、投資や生活費、渡航費などの名目で送金を求める手口です。
一度も直接会ったことがない相手から、お金や投資の話が出た場合は、送金する前に家族や警察へ相談してください。
特殊詐欺と混同しやすい「点検商法・訪問販売」にも注意
「屋根が壊れている」「給湯器の点検が必要」「近所で工事をしているので無料で確認する」などと言って訪問し、不安をあおって高額な契約を迫る点検商法も高齢者宅で注意したいトラブルです。
これは警察庁の特殊詐欺の分類とは別の悪質商法ですが、一人暮らしの高齢者を狙う防犯対策として一緒に備えておく必要があります。
契約してしまった場合は、消費者ホットライン188へ相談してください。
特殊詐欺の電話に共通する危険な言葉
- 「今日中に対応してください」
- 「誰にも話さないでください」
- 「あなたの口座が犯罪に使われています」
- 「逮捕状が出ています」
- 「ATMへ行ってください」
- 「キャッシュカードを預かります」
- 「暗証番号を教えてください」
- 「電子マネーカードを買ってください」
- 「安全な口座へ資金を移してください」
- 「必ず利益が出ます」
今日からできる特殊詐欺対策10選
1.固定電話は在宅中も留守番電話にする
犯人と直接話さないことが最も基本的な対策です。知らない相手の電話は留守番電話へ任せ、相手の名前と用件を確認してから折り返します。
2.迷惑電話対策機能付き電話機を使う
着信前に相手へ録音する旨を伝える電話機や、迷惑電話を自動判定・警告する機能を持つ製品があります。
3.知らない番号には出ない
表示された電話番号に心当たりがなければ、そのまま留守番電話へ任せましょう。特に「+」から始まる国際電話番号からの着信にも注意が必要です。
4.電話でお金の話が出たら必ず切る
親族、警察、役所、銀行など誰を名乗っていても、お金や口座の話が出たら一度電話を切るというルールを決めておきます。
5.家族だけの合言葉を決める
親族になりすました電話への対策として、家族しか知らない合言葉を決めておきましょう。SNSから推測しやすい情報は避けます。
6.「お金を動かす前に家族へ電話」をルールにする
振込、現金の受け渡し、電子マネー購入、インターネットバンキング送金などを行う前に、必ず家族へ電話するルールを決めます。
7.キャッシュカードと暗証番号を他人に渡さない
警察官や金融機関職員を名乗っていても、キャッシュカードを渡したり暗証番号を教えたりしないようにします。
8.SMSやメールのURLを安易に開かない
宅配業者、携帯会社、金融機関、公的機関を名乗るSMSでも、リンクを直接開かず、公式アプリやブックマークからアクセスしてください。
9.家族で最近の詐欺事例を共有する
「気を付けて」と言うだけではなく、「最近は警察官を名乗ってビデオ通話に誘導する詐欺がある」など、具体的に伝えることが重要です。
10.困ったときの相談先を電話機の近くに貼る
- 家族の電話番号
- 警察相談専用電話 #9110
- 消費者ホットライン 188
- かかりつけの金融機関
親に特殊詐欺対策を伝えるときのポイント
「高齢だから危ない」と言わない
「最近の詐欺は自分たちでも見分けにくいから、家族全員で同じルールにしよう」と伝える方が受け入れられやすくなります。
被害者を責めない
詐欺の犯人は、不安、焦り、家族への思いなどを利用します。まずは「電話が来たら教えて」「お金を動かす前に一緒に確認しよう」という関係をつくりましょう。
実際の電話を想定して練習する
- 「警察から『口座が犯罪に使われている』と言われたらどうする?」
- 「市役所から『ATMで還付金を受け取れる』と言われたら?」
- 「私から『電話番号が変わった』と電話が来たら?」
答えはすべて、「一度電話を切って、家族や公式窓口へ確認する」で構いません。
家族で決めておきたい特殊詐欺防止ルール
- 知らない番号には原則出ない
- 固定電話は留守番電話を基本にする
- お金の話が出たら電話を切る
- ATMへ行くよう言われても行かない
- キャッシュカードを他人へ渡さない
- 暗証番号を誰にも教えない
- 電子マネーを買うよう言われても買わない
- SMSやメールのリンクを直接開かない
- 送金前に必ず家族へ連絡する
- 迷ったら#9110または188へ相談する
特殊詐欺対策に役立つ防犯グッズ
- 迷惑電話対策機能付き固定電話
- 通話録音機
- ナンバーディスプレイ対応電話機
- テレビドアホン
- 見守りサービス・緊急通報サービス
防犯グッズの具体的な選び方は、高齢者向け防犯グッズおすすめ比較【2026年最新版】で詳しく解説しています。
住まい全体の防犯については、一人暮らし高齢者の防犯対策|今日からできる10の防犯対策もあわせてご覧ください。
もし親が詐欺被害に遭ってしまったら
1.送金や支払いをすぐ止める
まだ送金途中であれば、金融機関や決済事業者へ連絡し、停止できないか相談します。
2.警察へ連絡する
現金を渡した、カードを取られた、送金してしまったなど被害が発生している場合は110番へ連絡します。被害かどうか判断できない場合は#9110へ相談してください。
3.証拠を保存する
- 電話番号
- SMSやメール
- SNSのやり取り
- 振込先
- 領収書
- 電子マネーカード
- 犯人から送られた画像
4.金融機関やカード会社へ連絡する
キャッシュカードやクレジットカード、インターネットバンキングの情報を渡してしまった場合は、すぐに利用停止を相談します。
5.親を責めず、再被害を防ぐ
一度被害に遭った人へ、別の犯人が「被害金を取り戻せる」と連絡してくる二次被害も考えられます。家族は本人を責めず、その後しばらく電話や郵便、SNSの連絡を一緒に確認しましょう。
よくある質問
警察から「あなたの口座が犯罪に使われている」と電話が来ました。本物ですか?
その場で判断せず、一度電話を切ってください。相手から伝えられた番号へ折り返さず、自分で110番または#9110へ連絡して確認しましょう。警察が資金調査を理由に送金を指示することはありません。
市役所から還付金があると言われました。ATMで受け取れますか?
ATMを操作して還付金を受け取ることはできません。「還付金があるのでATMへ行ってください」と言われたら詐欺を疑ってください。
息子の名前を知っている人から電話が来ました。本物ではないのですか?
名前、住所、家族構成などの個人情報を犯人が知っている場合があります。名前を知っているだけで本人と判断せず、以前から知っている本人の電話番号へかけ直してください。
電子マネーカードを買うよう言われました。詐欺ですか?
未納料金などを理由にコンビニで電子マネーカードを購入し、番号を教えるよう求めるのは架空料金請求詐欺の代表的な手口です。購入や番号の送信をせず、警察や家族へ相談してください。
LINEやSNSでも特殊詐欺はありますか?
あります。2026年からはSNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として整理されています。知らないアカウントからの投資勧誘や、お金を求めるメッセージには十分注意してください。
親が詐欺電話を信じやすくなっています。どうすればよいですか?
電話機を留守番電話設定にする、防犯電話へ交換する、お金を動かす前に家族へ連絡するルールを決めるなど、「本人の判断だけに頼らない仕組み」を作ることが重要です。
まとめ|「電話でお金の話が出たら一度切る」を家族ルールに
2026年の特殊詐欺は、従来のオレオレ詐欺や還付金詐欺だけでなく、ニセ警察詐欺、SNS型投資詐欺、SNS型ロマンス詐欺など、手口が複雑化しています。
家族で最低限、次の3つを決めておきましょう。
- 知らない電話には出ない
- 電話でお金の話が出たら一度切る
- 送金・カード・ATMの前に必ず家族へ連絡する
特殊詐欺は、注意力だけで防ぐのではなく、留守番電話、防犯電話、家族との連絡ルールなどを組み合わせて「犯人と接触しにくい環境」をつくることが重要です。
あわせて読みたい記事
参考情報
- 警察庁|特殊詐欺の認知・検挙状況等について
- 警察庁|SOS47 特殊詐欺対策ページ
- 警察庁|令和7年における特殊詐欺等の認知・検挙状況(確定値)
- 警察庁|令和8年5月末の特殊詐欺の認知・検挙状況等について
- 政府広報オンライン|警察相談専用電話 #9110
- 政府広報オンライン|消費者ホットライン188
ご利用にあたって
本記事は2026年8月時点で確認できた警察庁などの公的情報をもとに作成しています。特殊詐欺の手口や分類、統計は更新されることがあります。最新情報は警察庁・自治体・消費生活センターなどの公式情報をご確認ください。現在進行中の犯罪や身の危険がある場合は110番へ連絡してください。





